訪問看護を9年やっていました。
在宅では家族への援助も大切なケアになりますね。
どういった援助があるの?どういう視点で見たらいいの??
訪問ナースの家族への援助計画の作り方をお伝えします。
そもそもなぜ在宅介護家族への援助が必要?
患者と家族が「共倒れ」にならないこと
介護することで家族の具合が悪くなり、患者の在宅療養ができなくなった・・・それを避けるためです。
確かに・・・・
共倒れになると、患者も在宅療養できなくなるね
でも在宅療養を希望している理由もそれぞれ違います。
例えば、在宅での看取りを希望し最期まで介護するつもりのケース、施設入所の空きが出るまでの一時的な在宅介護をするケース、急に介護が必要になりとりあえず在宅療養をすることになったケースなどさまざまです。
計画を立てるのに切ってはきれない関係なのが看護目標です。
看護目標って、看護師と対象となる患者や家族とが共有する最善の目標になりますね。
対象にとっての最善の目標?
例えば施設が空くまでの一時的な在宅療養で介護者も戸惑っている状況で
「長く安心して在宅療養ができる」みたいな目標って、目標がずれているよね
看護目標や看護計画はご家族にも渡す書類なの。同じ目標に向かわないと意味がなくなっちゃうね。
そうか・・・
看護目標って、看護師だけの目標じゃないのね
そう。さっきの例でいうと、一時的な在宅療養であるならば、
例えばだけど、入所まで事故なく安全に在宅療養できる、みたいな目標になるかな・・
そして、看護目標は、ケアマネージャーが作成するケアプランと主治医の訪問看護指示書に合ったものでないといけません。ケアマネージャーが作成する居宅サービス計画書の目標を見てみましょう。
主治医の訪問看護指示書に合ったものって?
例えば、安静の指示が出ているのに
リハビリを頑張るような目標だとおかしいよね
看護目標って、どういう方向へ向かって看護していくか大きな道しるべみたいなもの。
その目標は、患者さんやご家族とも共有し、他の看護スタッフも共有するものです。
その目標をかなえるためには何が問題になる?何が心配?って考え方をする。それを看護問題#として出していく。
え・・・意味不明・・・
現場では先に②看護問題を立てて、そして①看護目標を考える場合も多いです。
では③の看護計画を考える前に②の看護問題#を考えてみます。
現場で使用される介護家族への具体的な#看護問題
どんな#があるのかご紹介します。
具体的にどんな看護問題があるのか
知りたい!
職場で作っていた看護問題を簡単に記載すると
- #(介護者)は持病があり介護による身体的負担が大きい
- #介護負担によるストレスが大きい
- #初めての介護で不安が大きい
- #先の見えない介護でストレスや身体的な負担が大きい
- #同居家族のマンパワー不足
などあげていました。これをより個別化したものがいいですね。
ではつぎに③の看護計画についてです。
在宅の介護家族の看護計画の作り方
O-P、C-P、E-Pって何?からスタートしますね!
看護計画のO-Pってなに?
O-Pはその#看護問題に対して看護師が観察していく項目です。
観察項目と言えば分かりやすいですね。
介護家族への援助計画だったら、観察するO-Pはその介護者に対する観察項目です。
看護計画のC-Pってなに?
その#看護問題に対して、看護師がやっていくことです。
つまりケアープランです。
介護家族の援助計画なので、看護師がその介護者へやってあげること、計画です。
看護計画のE-Pってなに?
その#看護問題で、患者もしくは家族へ指導、伝えることです。
education(教育)プランの訳ですね。
ん・・・それで??
なんかわかりにくい・・・
じゃ、簡単事例で一緒にやってみましょう。
在宅介護家族の看護計画作成、簡単事例で一緒にやってみましょう
患者82歳男性、妻81歳と二人暮らし。子どもなし。
患者は一カ月前から食欲低下と嚥下時のむせ込みあり。歩行困難となりベッド上生活。
妻が食事の準備、食事介助、オムツ交換をしている。
妻は介護が初めてで介護への不安を口にしているが、夫婦関係は良好で、自宅で過ごしたい、妻も面倒見たいと言っている。
ケアマネージャーから訪問看護の依頼があり訪問開始となる。
この情報のみで看護目標、看護問題、看護計画を立ててみたいと思います。
〇看護目標(長期)・・・在宅での療養生活を安全安楽に続けることができる。
〇看護問題・・・#1.嚥下困難あり誤嚥性肺炎のリスク
#3.歩行困難ありADLの低下がある
#2.食欲低下による低栄養、ADL低下による皮膚トラブルのリスク
#4.妻は初めての介護で不安が大きく高齢なため身体的負担も大きい
〇看護計画・・・では#4に対する看護計画を立ててみます。
#4.妻が初めての介護で不安が大きく高齢なため身体的負担も大きい
O-P(観察項目): (看護師は妻の何を観察するのか?? ) 妻の体調、言動、(立てる時点で病気があると分かっていたら)通院状況、内服状況、食欲の有無、介護状況、夜間入眠状況、生活リズム、気分転換の有無、
C-P(ケアープラン):(看護師が対象者すなわち妻にやること) 介護状況やストレスなど話を傾聴する、介護で不安な点や分からない点などその都度お話を聞いて対応する、一緒にケアーに入り介護方法を見てもらうなど妻のペースに合わせる、妻の体調により訪問中は休んでいただくなど配慮する、他の関係機関と連携し必要なサービスの提案をする、介護用品など情報提供をする
E-P(教育プラン):(看護師が妻に教育すること、伝えること) 不安な点や分からない点は何でもいいので話すように伝える、疲れた時はなるだけ横になるなど無理をせず休養するように指導
こんな感じになるでしょうか。
在宅介護の家族への援助
在宅で介護する家族への援助はとても大切です。
患者の在宅療養が続けられるかどうかにつながっていきます。
患者への援助と同じで、まずは介護者の情報を集めていきます。
介護家族と会う!訪問ナースの観察ポイント
介護家族のどういう点を観察するのでしょうか?
1.どういう介護をしているか
2.介護者の理解力
3.介護者は何人?他に協力してくれる人は?
4.患者との関係性
5.介護家族の健康面
6.患者との体格差
7.ストレス発散法は?
8.サービスの受け入れ
1.どういう介護をしているか
例えば患者がオムツを使っている場合、オムツ交換は誰がしている?他に着替えは誰が?食事の準備は?
オムツひとつとっても、オムツはノータッチ、反対に細かに交換する家族もいます。
入浴できない場合、誰も身体を拭いていない場合もあるし、毎日身体を拭いている家族もいます。
現在の介護体制でどこまでやれているのか事実を知ることが大切であり、ジャッジするものではありません。
2.介護者の理解力
説明したことが理解できる力があるか?です。
大切なことを伝えても覚えていられるだろうか?実行できるだろうか?
介護者の年齢や障害等の有無、精神状態でも変わってきますね。
例えば大事なことは口頭だけでなく紙に書いて渡すなどの対処が必要になってきたり、一回にたくさん伝えず、少しずつ小出しで話していく、など対処が変わってきます。また必要に応じて理解力のある別の家族に連絡を取る場合も出てきます。
介護者の理解力は、家族から患者の話を聞いたりと会話をすることで把握していきます。
3.介護者は何人?他に協力してくれる人は?
家族みんなで交代で介護するケースもあれば、他の家族は介護はノータッチのケースもあります。
また週末だけ介護に来る家族がいる場合もあります。
同居家族が他にいるのに介護を手伝ってくれないケースも時々ありましたが介護者のストレスは大きいですね。
また患者と二人暮らしで、他に頼る人がいない場合も不安が大きいです。
4.患者との関係性
患者と介護家族との関係性でも介護者のストレスや介護状況は大きく変わります。
介護を受け入れられる介護者と、どうしてわたしが?との気持ちがある場合とはストレスも変わりますよね。
そのほかに、介護者と患者の力関係もそれぞれ違います。介護してもらって当たり前と思っている患者と、感謝の気持ちがある患者とで介護者のストレス具合は変わってきます。
5.介護家族の健康面
介護者に心身ともに病気はないか?既往はないかも知っておきたい面ですね。自分のことが二の次になってしまい受診しなくなることもあります。
また腰を痛める介護者も多いです。
病気によっては、信頼関係がないと打ち明けにくいこともあります。
コミュニケーションを重ねて信頼関係ができてくると介護者から話してくれる場合もあります。
介護が大変ですよね、〇〇さんは体調はどうですか?など、いたわる言葉がけをしながら引き出していきましょう。
6.患者との体格差
患者が大柄で介護者が小柄だと介護負担は大きくなりますね。
ベッド上での介護をする場合、体位交換ひとつとっても大変さが違いますし、移乗介助など、また歩行介助でも小柄な介護者は大変です。
7.ストレス発散法は?
ストレスの発散方法はそれぞれ違いますね。
外で買い物がしたい、お友達と会いたい、寝たい、などなどです。
介護の合間にストレス発散が上手にできたらいいですが、なかなかそんな時間が取れなくなるケースが多いです。
8.サービスの受け入れはいい?
サービスの受け入れって何?
サービスって、例えば看護師やヘルパーが自宅へ入ることや
デイサービス等の利用とかなんだけど・・・
自宅に他人が入って来られることがストレスになる人もいるよね
看護師が訪問するもの、本当はイヤだと思っている人もいます。
そんな場合もゆっくり信頼関係を築くことが大切になってきます。
こういう細かな情報って、なんで必要なの??
細かな情報は、結局はP(プラン)に結びついていきます。
#看護問題を立てて看護をして、記録でSOAP展開しますよね。その時に、では次はこんなP(プラン)にしようとより個別にあったPを立てることができます。
その患者を知ること、家族を知ることで、結局はその患者に合った援助が立てられます。
介護が初めての家族は不安も大きい
あと知っておきたいポイントは、その家族が介護経験があるかないかです。
介護はまったくやったことがない家族は、介護ができるのか?という漠然とした不安があります。
例えばですが、患者がオムツを使うことになった。看護師にとってオムツは慣れたものですが、オムツを触ったことがない家族もいます。そんな場合はまずオムツに一緒に触ってみる、交換するところを見学してもらうなど、介護者の力量に合わせた看護計画が必要です。
そして介護を受け入れているかも大事なポイントです。
介護負担は患者と介護者との関係性も大きい
例えば姑の介護をすることになったお嫁さん。
意地悪な姑の介護をやるなんて・・・
最悪だわ・・・
そう思ってるかもしれませんよね・・・
反対にこんなケースもあります。
親が弱っていくのを見るのがツライ・・・
患者との関係性や、介護者の性格によっても違ってきます。
そんな心の中は、いきなり来た初対面の看護師に話せる人はいないでしょうし、またこちらから聞けませんね。
心の中のストレスを吐き出してもらえるような関係性を築き上げていくことが大事です。
そして介護者のO情報ですが、会話の中から上手に拾っていくことが多いので、会ってすぐ聞くのではなく、話の流れで上手に聞いたりしていきます。
介護者の力量に合わせた援助計画が必要
介護家族の体力、体調もふくめ、介護者の力量に合わせた援助計画が必要です。
例えばストーマの装具交換などの医療行為が必要な場合も、介護者にその力量はあるか?の見極めも大切です。
力量があってもやりたくないという場合もあります。その場合は無理にさせることはできないですよね。
でも、見ているうちに少しずつやる気になる場合もあります。
声掛けで大切だと思うことは、
介護を自分だけでやらないといけないのか?という不安を持つ家族もいますが、ケアーマネージャー、看護師、ヘルパーなどが入ることで「一緒に考えていきましょう、一緒にやっていきましょう」というスタンスを伝えることです。
一緒に支えますよ、という安心感を伝えることもとても大事だと思います。
まとめ
家族介護の援助についての看護計画の考え方をお伝えしました。
計画を立てるのは慣れの部分もあります。
あせらずにやってみてください。お役に立てたら嬉しいです。