看護師の仕事

患者の気持ち】不安を支える看護師のコミュニケーションで大切なこと

看護師のわたしは26歳の時に約2か月、入院を経験しました。

診断名は頸椎腫瘍。レントゲンフィルムに写った白い塊を見た時、激しく動揺しました。

この入院を通して患者の不安、気持ちなど、わたしの経験をお伝えしようと思います。

医療者の動揺は伝わる

首に原因不明の激痛が続き、CTを撮ることになりました。

レントゲン技師さんは、おそらくわたしと年齢が近かったためか、とてもフレンドリーで親切に接してくれ、CT撮影の注意点など説明してくれました。

CT撮影が終わり、再び部屋に入って来たその技師さんは、よそよそしい感じになっていました。

その時に感じました。

ああ、なんか悪いものが写っていたんだな、と。

人間ですから、動揺すると、なんとなく伝わってしまいますよね。
その時の技師さんが、ではどんな対応だったら正解かは、今のわたしにも分かりません。

その後には医師から診断されます。なのでその技師さんがが全く動揺せず、検査前と全く変わらない態度だったとしても、それはそれで複雑な気持ちになったでしょう。

確実なのは、その技師さんの態度の変化で、わたしは何か良からぬ物が写っていたんだなと知ったということです。

手術後のせん妄体験

働いていた時、患者がせん妄になったことは何回かありました。

でも、まさか自分がなるなんて・・・笑

わたしは手術後は10日間など、仰臥位でのベッド上安静と言われていました。

手術が終わった日の夜、マスクで酸素をしていました。

喉がすごく乾くためナースコールを押して、看護師が濡れたガーゼで水を吸わせてくれたのを覚えています。

夜中、わけもなく、「ちょっと動いてみよう」と思いました。

突然です。なぜか「ちょっと歩いてみよう」と思ったのです。

身体に力を入れて動こうと思ったのです。、、、が全身に力がまったく入らなかったのです。

これ、完全にせん妄ですよね。笑
手術前に、わたしと同じ手術をした患者がせん妄で廊下を歩いててびっくりした、という話を看護師がしてくれていました。その同じことを真剣にやろうと思っていたのです。

でも不幸中の幸い、本当に力が入らず、ベッドの上でもがくだけでした。その後38度越えの熱が出て解熱剤の座薬を使ったのは覚えています。術後の熱ではなく、私は密かにもがいて熱が上がったと思っています。笑

はっきりした理由はなかったんです。
でも、動きたくなった。

点滴や酸素は、一応看護師という職業上、大事だと思っていたのでそれには触れなかったです。
でも、念願通りベットを降りていたら、点滴は抜去して血だらけ、貧血もあったし骨も動かしていたので間違いなく転倒してました。

今だから笑っちゃうエピソードですが、せん妄って、その状況になったら誰でもなり得るんだと思いました。

入院生活での不安やストレスの原因

入院は人生で初めてでした。
これまで病気とは縁遠く、また腫瘍という病名もあり、メンタルはかなり参っていたと思います。

同室患者のストレス

手術が終わって11日はベッド上安静でした。6人部屋でした。
入院期間の中で、特にその動けない11日間がとても大変な日々でした。
ベッドから動ける状態か否かでも違ってくると感じます。

避けられない患者同士の噂話

あえて同じ病気の患者は同室にしないなど、その病院で配慮されているとは思いますが、それでも患者同士の噂話がイヤでも耳に入ってきました。

「〇〇号室の人はどうも〇〇らしいわよ」
「手術〇回してるんだって。もうダメだよね」

噂されていたのは、わたしと同じ脊椎腫瘍の患者の話のようでした。

聞きたくないけどその場から逃げることもできず、同じ部屋で繰り広げられる噂話にはかなりナーバスになりました。

患者の上下関係

隣のベッドのおばさん患者は上下関係を作りたがる人でした。

同室の気の弱そうなおばさんに「ちょっと、悪いけど、片づけてくんない?」など、自分の食器を片付けさせたり、ベットサイドの倒れたゴミ箱を呼びつけて立てさせたり、顎で使っていました。

整形外科でしたが、骨折などとは違い、おそらくどの患者もそれぞれ疾患があり手術をしているため、入院期間もある程度あったためか患者のイヤな上下関係ができていました。

面倒ですが、看護師へ言うほどでもなく、でもそういう面でも不快だったり疲れるという感じでした。

隣の患者の状態が心配で不眠

隣のベットに入院してきた人は、火災で全身やけどを負い、その後形成手術を何度も受けている人でした。
その人は夜中にいびきがあったのですが、かなり長い無呼吸があるのです。火災後から安定剤を複数常用していたそうで、、、安定剤と無呼吸・・・、心配になりますよね。

無呼吸の時間を測ってしまい、その都度ナースコールを押すことに・・・。

あ、もう30秒は無呼吸・・・か、看護師さーんっっ

自分の病気で限りなくナーバスになっていたので、周りの環境も全部ナーバスに考えてしまって、心配で仕方なかったのです。

患者は看護師にとっても気を遣う

わたしは看護師にはとても助けられました。今でも感謝でいっぱいです。

でも患者の立場になってみると、看護師にとっても気を遣うのが分かりました。

ナースコールを押すタイミング

ナースコールを押したいけど忙しそうだな。
今、処置で回っていたからもう少し後がいいな。
お昼は人が少ないから我慢しよう。

などナースコールを押すタイミングは気を遣いました。

わたしが看護師で内情を分かっていることもありますが、他の患者も「看護師さん、忙しそうね」と言っては看護師に気を遣っていました。

こんな用事でごめんなさい

わたしは仰臥位での安静生活だったので、ベッドから物を落とした時は困りました。
食事中にお箸を落としてしまった、吸い飲みを落としてしまった・・・。

その都度ナースコールを押さないといけません。

こんな用事でごめんなさい。そう思っていました。

でもそんな用事でも明るく優しくすぐに来てくれて、嬉しかったです。

看護師にやってもらって、嬉しかったこと

看護師としては当たり前のことだと思うのですが、今でも嬉しかったと覚えていることがあります。

ルーティン業務の中の些細なこころ配り

看護師にとったら当たり前の仕事でも、やってもらう患者にはそのひと手間がとっても嬉しかったりします。

あせもに気が付いてくれ素早く軟膏塗布

仰臥位で過ごすので、一日1回、医師の診察で側臥位になる瞬間がとても楽しみでした。
そのわずかな時間に、温かいタオルで背中を拭いてもらえるのです。極上の時間です。

ある日、背中にあせもが出来ていたようです。そういえばちょっと痒かった、みたいな感じです。

いつものようにパパっと背中を拭いてもらった時に、

「あ、あせもできてるね」と素早く軟膏をつけてくれました。

わたしが訴えなくても、ひと手間をかけてくれる。

その気持ちがすごく嬉しかったのです。

アイスクリーム

入院した病院は、わたしが以前働いていた病院でした。
わたしを受け持ってくれた看護師は、わたしの同級生でした。

仕事が終わってからこっそり、地下の売店でアイスクリームを買ってきてくれました。

何が嬉しかったかというと、ルーティン業務ではない、気遣ってもらっているという、プラスαの優しさでした。

ナースコールで来てくれる時の優しさ

ナースコールを押すのは少し気が引けます。
でも必ず、「はーい、いま行きまーす」という明るい返事。

優しい明るい笑顔で来てくれることが、本当に助かるのです。

こんなことで呼んじゃった。患者の立場だとそんな気持ちにもなりますが、看護師の優しさに触れると本当に安心するのです。

話しかけやすい雰囲気でいてくれる

忙しい時間でも、穏やかに接してもらえると、本当に助かります。
ちょっと聞きたいことって、あるんですよね。

でも、忙しそうだと感じると、なかなか聞けない。
でも、このチャンスを逃すと次に聞けるチャンスまで待たないといけない。

忙しくても話しかけやすい穏やかな雰囲気でいてくれると助かります。

患者は受け身にならざる負えない

患者になると、全てが受け身になります。
検査の日程だって、入院期間だって、病気の症状が出ていたらそれにも振り回されます。

環境さえ自分で選べない

入院しているので当然なことなのですが、患者は自分を取り囲む環境も自分では選べません。

個室でなければ、同室者との関係も出てきます。
治療をしてもらう立場なので「まな板の上のコイ」のような気持ちです。

自分が病気についてどれくらい受け入れられているのかなんて関係なく検査が入ってきます。
医師の判断が自分の命と関わってくるので、命を預けているような感覚です。

わたしは腫瘍を手術で取りました。
術後の教授回診の時に、主治医はわたしを気遣ってくれたのでしょう。看護師のわたしに聞こえないようにベッドから離れて教授と今後の方針を相談していました。
ぼそぼそ聞こえる単語から、放射線治療をした方がいいかの相談だったようです。

教授は、「いや、いらないでしょう」と答えました。

わたしの心の中は、週に一回、顔をちょろっとしか見ない医師(教授)が、わたしの今後の運命をこの一瞬の判断で左右していることに少なからず不安と小さな不満が湧いたのを覚えています。わたしには考える選択肢もないのです。

患者は、自分の命ででも、ある程度医師や看護師に任せないといけないのです。

不安の介入が難しい患者について

わたしは人に頼るのはちょっと苦手です。
不安な気持ちとか困難な時、自分で抱え込んできたタイプです。

入院中に腫瘍が悪性だと分かりました。
術後、歩いたりのリハビリを始めていた頃です。
不安で不安で布団の中で泣きました。

でも、看護師さんにその思いを伝えたり、苦しい胸の内を話すことはなかったですし、望みませんでした。

介入を嫌がる患者の気持ち

患者の中に時々いますね。
不安があるはずなのに、話してくれずにどう援助したらいいのか分からない。
不安を話してくれたら気持ちの援助ができるのに。
そう思う患者に、わたし自身も接したことがあります。

でも、不安を表現することに慣れていない人がいます。
不安な気持ちを言えない人もいます。

不安を言わないことで自分を保っている患者もいる

入院して全てが受け身になっている状況で、全てが今までの自分とは違う生活になっています。

どんなに身体が丈夫だと思っていても
どんなに仕事で成功を収めていたとしても
どんなに幸せな日々を送っていたとしても、

病気になり入院すると、全てが一変してしまいます。

でも、唯一、自分のこころだけは自分で決められます。

これまで他人に弱音を吐かずに生きてきた人にとったら、病気になったからといって、弱音を吐きたくはないのだと思います。

でも、きっと、もう耐えられない、
誰かに聞いてもらいたい

そう思った時は、患者自身が、自分から話すのだと思います。

その患者が話したいタイミングで、
その患者が伝えたいタイミングで話すのだと思います。

不安を言わないのもその人の唯一と言っていい主張です。

時に、気難しくて、どう介入していいか分からない患者にも、今まで接したことはあります。

でも、今なら、その患者がガードしていることも、
そのガードしていることがその患者の意思であり、
数少ない、自分で選択できる意思表示なのだと思います。

でもそこで「こんな人なのね」と突き放すのではなく、他人に弱音を吐かないという意志を尊重すること、そしていつでもその患者が話したい時に、話したいタイミングがあったら、その思いをくみ取る準備をいつでもやっていることが、個を尊重し寄り添うことなのではないかと思います。

きっと、寄り添う気持ちで接していると、患者にもその思いは伝わっていくのだと思います。

わたしは、脊椎腫瘍と診断されたとき、自分が働いていた病院を選んで入院しました。
働いていた時は、絶対この病院には入院しないと思っていました。

では、なんで自分が働いていた病院を選んだかというと、とても心細かったのです。

腫瘍と診断され、自分の命を考えた時、

不安で不安で、不安で不安でした。

ワラにもすがる気持ちで、自分の知っている人達が働いているところを選びました。

本当に、不安で押しつぶされそうでした。

そして助けてもらいました。

まとめ

悪性と診断されて真っ暗な穴に落ちてしまった気持ちでした。
でも、その後再発はなく、いまでは病気のことさえ忘れている毎日で、元気で幸せです。

入院して看護師さんは天使だとお世辞ではなく思っています。本当に助けられました。
信じる者は救われる、の世界でしたが、主治医にも本当に心から感謝しています。

わたしのこんな経験が少しでも悩める人のお役に立てたなら嬉しいです。